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町長所信表明
町長 所信表明
・はじめに
令和7年度当初予算を上程するに当たり、私の所信を申し上げ、町民の皆様並びに議員各位のご理解とご協力をお願い申し上げるものです。
私のまちづくりの基本姿勢は、基本コンセプトである「きぼうのしま・にぎわうしま・やさしいしま」に基づき、安心・安全な暮らしのできる島づくり、関係人口が加わることで住民の産業や文化が発展し定住が進む島づくり、子育て支援や教育・福祉が充実している島づくりを推進し、町民の皆様との協働作業により豊かな島をつくることです。
さて、国においては、令和7年度予算のポイントとして「賃上げと投資が牽引する成長型経済へ移行するための予算」としています。財源を確保しつつ複数年度で計画的に取り組んでいる重要政策課題を着実に推進するとし、防衛力の強化、こども・子育て支援の本格実施、GX投資推進、AI・半導体産業基盤強化への対応を挙げています。
また、東京都は、令和7年度予算を「不確実性が高まる社会情勢の中、『成長』と『成熟』が両立した持続可能な都市の実現に向けて、全ての人が輝く東京の未来を切り拓く予算」と位置付け、次の点を基本に編成しました。
1)東京のポテンシャルを最大限活かし、「ダイバーシティ」「スマートシティ」「セーフシティ」の3つのシティを進化させ、「世界で一番の都市・東京」の実現に向けた施策を積極的かつ着実に展開すること
2)都民が実感できるクオリティ・オブ・サービスを向上させるため、DXなど新たな視点で業務の見直しを進め、持続可能な執行体制の構築を図りつつ、無駄を一層無くす取組を強化し、強靭で持続可能な財政基盤を堅持すること
こうして編成された東京都の一般会計予算案の総額は、前年度から7,050億円の増となる9兆1,580億円となり、過去最大規模である前年度を更に上回る予算となりました。この中で、主要施策の一つである「多摩・島しょの振興」については、「東京の多様な個性である多摩・島しょ地域の魅力を引き出し、賑わいと活力に満ちあふれた地域の持続的な発展に向けて、多摩・島しょそれぞれの特色を活かした地域づくりを推進する」としており、予算額は前年度から260億円増の2,963億円となりました。
・令和7年度当初予算の概要
このような背景の下、令和7年度当初予算を編成しましたが、一般会計予算規模は87億1,000万円、特別会計を合わせた全会計の予算規模は128億247万5千円となり、前年度当初予算額と比較しますと、一般会計は4.0%減の3億6,500万円の減額、全会計では1.1%減の1億4,035万円の減額となりました。令和7年度では、昨年策定した公共施設個別計画をはじめとする各種計画を基に、長い間課題となっていた案件について改善に向けた取組みを始めます。また、整備を完了した伊豆大島ジオパーク拠点施設や島外生徒受入のための学生寮、移住体験住宅などの運用が始まり、今まで準備してきた事業を展開し充実させていく、次の1歩を踏み出す年と位置付けております。
続いて、新規事業及びレベルアップ事業を中心とした予算の取組内容について「第7次大島町基本構想」で定めた6つの基本目標に基づき説明いたします。
1 豊かな自然と共生したまちづくり ― 町の基盤づくり ―
適正な土地利用に努め、広大な海域や豊かな自然の持つ可能性を最大限に生かし、自然と人々が調和し、仲良く共生する環境づくりを推進し、住みよい大島を創ります。
交通運輸においては、現交通ネットワークの拡充を進め、島内の公共交通事業者や多様な主体と連携・協働し、持続可能な公共交通の提供に資するため策定した「大島町地域公共交通計画」の下、利用しやすい交通体系の確立を図ります。また、大島からの移出品や、その原料となる移入品について、国や都の補助金を活用し海上運賃に対する助成をおこない、島内事業者の運輸に係る負担の低減を図ります。主な事業は「大島町地域公共交通活性化協議会の運営」「大島町離島輸送コスト支援事業」等です。
道路、河川等の土木事業では、住民生活の安全・安心と地域環境の保全に努めるとともに、観光地として景観にも配慮し、人と自然にやさしい町の基盤づくりに努めます。主な事業は「沢立沢改修事業」、「長根野田浜線ほか5本の町道改修舗装事業」、「無電柱化整備事業」、「黒まま橋長寿命化改良事業」などです。また、令和6年度より実施している「橋梁個別施設計画更新」に係る調査で危険度判定4と診断された「万立橋」について、「長寿命化改修工事」にかかる予算を新規事業として計上しました。
快適な住環境を整えるための住宅事業では、町営住宅の適切な管理により引き続き良質で低廉な住宅の供給を図ります。また、防災及び家屋有効活用の観点から実施している「空き家等対策事業」についても、引き続き対応してまいります。
2 安全・安心でやすらぎのあるまちづくり ― 地域環境づくり ―
住民一人一人が相互に協力して、地域を知ることにより、生活安全意識の向上を図り、環境にやさしく、きれいな水と緑豊かな潤いのある、安全・安心でやすらぎのある地域環境を形成します。
大島町では、地球温暖化に関する世界や我が国の動向、大島町を取り巻く状況を踏まえ、大島町ゼロカーボンシティを達成するため、令和6年3月に「大島町地球温暖化対策実行計画」を策定しました。2030年度(令和12年度)のカーボンハーフの実現に向けた大島町公共施設に関する取組みとして、耐震性などに問題がない施設の50%に太陽光発電設備の導入を進め、建物の建替え等に合わせてZEB化を図ります。
また、昨年国立電気通信大学と大島町との共同提案により3年間に渡る事業を開始した「円筒型太陽電池を活用した島嶼地域におけるソーラーシェアリング実証実験」では、新開牧場に設置するペロブスカイト円筒型太陽電池の下で明日葉を栽培し、発電量や塩害、農作物の成長等の研究を行い、大島町の地域資源の活用を図るとともに、離島向けソーラーシェアリングのモデル確立を目指します。余剰電力は、ぶらっとハウス等で使用していく計画です。なお、円筒型太陽電池はその特性上軽量・柔軟で設置場所を選ばないことから、電力需要の小さな指定避難所における災害時の非常用電源としての活用についても検討を行っていきます。
浮体式洋上風力発電については、規模や設置海域等の事業計画詳細の検討がなされているところですが、風力発電は太陽光発電と異なり夜間でも発電することができるため、太陽光発電を補完するものとなることから、災害時にはよりレジリエンスの向上に寄与することができると考えます。
防災対策では、災害に強いまちづくりのため、地域コミュニティとの共同により地域防災力の強化・充実を図るとともに、「地域防災計画改訂」と「防災備蓄庫整備事業」、「消防無線施設更新事業」「防災行政無線デジタル化更新事業」を実施し、災害に備えた準備・対応を進めます。また、昨年度に各避難所をはじめとする公共施設への公衆Wi-Fi整備を行いましたが、携帯電話の通信困難地域については、解消に向けて引続き関係機関に働きかけます。
上下水道事業について、当町では「人とともに進化する水道」を基本理念とし、公営企業として「大島町水道事業」を運営しておりますが、経営状況は非常に厳しいものとなっています。しかしながら安全・安心でおいしい水の供給に努めることはもとより、昨今の物価高騰による住民への費用負担増加を少しでも抑制するため、令和4年度から実施している水道料金5%相当分の補助を今年度も継続して実施します。
また、昨年度より公営企業として運営している「公共浄化槽整備促進事業」では、分散型の集落形態、多大な建設費用、受益者負担などを考慮し、地域の特性、実情に見合った形態で生活排水を処理できるよう事業を進めていきます。
3 健康で思いやりにあふれたまちづくり ― 福祉の充実、健康づくり ―
大島町に暮らす子供からお年寄り一人ひとりに必要な福祉サービスが行きわたり、子どもが健やかに成長できる子育て支援サービスや、検診や予防接種などの健康に関する事業の充実を図り、誰もが生きがいを持ち、安心して健やかに暮らせるまちづくりを推進します。
保健・医療においては、大島医療センター設備・機器類の更新・改修等により当町の医療提供体制を確保・維持するとともに、各種予防接種やがん検診、乳幼児・妊婦検診を継続的に実施します。また、新規事業として、オンラインツールを活用した保健事業サービスを導入し、住民の更なる健康増進に努めます。
児童福祉事業では全国的な少子化傾向のなか、子どもたちは島の宝であることから、安心してこどもを生み育てることができる環境の整備、子供の成長に応じた様々なステージにおける子育て支援サービスの充実により、次代を担うこどもの健全育成を図ります。また、保育士や栄養士等の専門職を確保することが困難になりつつある事から「保育のICT化」による業務の効率化も実施します。
4 理解を深め、共に育むまちづくり ― 教育・文化の向上とふるさとづくり ―
次世代を担う子どもたちが、豊かな自然の中で、地域や社会全体の力により、健やかに成長できる教育・子育て環境を整えます。地域の価値と魅力を認識し、郷土に誇りと愛着を持つことによって、住民が一体となった地域資源の継承を推進します。また、住民ひとり一人がよりよく生きるため、生涯にわたり学習できるスポーツや文化等の面において充足した環境や行事づくりを推進します。
令和6年度より学生寮の建設工事に着工した「島外生徒受入事業」では、前年に引き続き外構工事や備品の整備を実施するとともに、施設見学会や入居者の選考を行い、大島高校とも連携しながら令和8年度の離島留学生受け入れに向けた準備を進めます。
文化財の保存事業では、地域おこし協力隊の活用により文化財の登録や新たな掘り起こしを進め、継承者が減少しつつある地域文化や地域資源の継承を推進します。
学校教育に関する事業では、学校施設に防犯カメラを設置し、児童生徒及び学校関係者が安心して過ごせる環境を作るとともに、年々増加を続ける施設管理費の見直しについても進めていきます。子育て世代を支援したい思いから、昨年度から行っている「給食費の無償化」については、今後も引き続き取り組んでまいります。
また、図書館システムのインターネット対応化、三中グラウンド照明改修、三中体育館大規模改修・空調設置、さくら小体育館照明改修等により、すべての住民が利用しやすい施設づくりを目指します。
5 時代に合った地域性を生かしたまちづくり ― 活力ある地域づくり ―
衰退傾向となっている農業・漁業・商工業等における人材を島内外問わず確保し、様々な世代が定着し活力ある産業振興を図ります。各産業を相互に連携させ、それぞれの資源や強みを持ち寄って経営基盤の強化安定を図る施策を展開します。
農林畜産業、漁業では、特産品の開発やブランド化に努めるとともに、地産地消を推進し、体験事業や育成事業を通じて後継者の確保・育成に努めます。また豊かで活力ある農林畜産業、漁業を目指し、「農業振興地域整備計画基礎調査」や「小規模土地改良事業」による農地荒廃化の防止、遊休農地の利活用、「茶毒蛾・松くい虫の駆除」による天然林の保全、「食害生物対策事業」や稚貝放流による海産物資源保護と藻場の復活などを推進します。
観光においては、長らく大島町の主要事業として実施していた火山博物館施設改修が完了し、「伊豆大島ミュージアム ジオノス」として生まれ変わります。ジオノスは、単なる観光施設ではなく、多様な方が訪れ、伊豆大島の地域資源を学び楽しむことで、エリア内の貴重な地域資源の保全・保護を促すとともに、教育や防災、ジオツーリズム等への活用により、地域全体の持続可能な発展を図るための拠点施設です。令和7年度にはオープニングセレモニーをはじめ、企画展やジオガイド養成講座などのイベントも用意し、皆様のご来場をお待ちしております。また、新たな拠点施設のオープンとともに、御神火温泉や弘法浜サンセットプールなどの既存施設の維持管理や活用を含め、持続可能な観光地を作るため、大島町が目指すべき姿やコンセプトを明確化して共有できるよう、大島町観光総合計画を令和7年度中に完成させます。
今月(3月)開催される国際ツバキ大会コングレスツアー、11月に日本で初めて開催される「第25回夏季デフリンピック」のオリエンテーリング競技では、多くの外国人が大島を訪れます。このような催しは、インバウンド対応のうえでも重要と考え、また、島の魅力を発信できる大きな機会ですので、催しの成功に向けインバウンド対応に係る各種整備の準備検討を進めます。
移住・定住については、元町家の上団地の跡地に建設中の「移住体験住宅」への入居が開始となるほか、「地域おこし協力隊」を積極的に活用して関係人口・交流人口の増加を目指します。
なお、令和6年度より本格的に開始した上質な宿泊施設の誘致に関する事業については、地域経済の活性化のために行うものですが、事業を強力に推進するため新たに専任を設け、要綱に基づく各課横断的なプロジェクトチームを立上げてまいります。その中で、観光課、産業課、政策推進課を中心とし、各関連団体と一体となって誘致を進めていきます。
6 まちづくり推進のために ― 住民とともに歩む ―
民主的な町政を推進するために住民の意向を十分把握するとともに、行政の実態を常に周知することに努め、理解と協力を求めていきます。
情報発信については、新たに大島町公式LINEを開設し、様々な情報が手軽にお届けできるような体制を整えます。
また、効率的で質の高い住民サービスを提供するため、適時職員研修を実施するとともに、業務効率改善のためのDX化も積極的に実施します。令和7年度事業としては職員の勤怠管理をシステム化することにより、各種集計作業に係る業務負担を低減させます。
財政面については、近年の決算状況の分析により、各種施設の維持管理費が増大し財政を圧迫しているといった状況が明らかになっています。少子高齢化と急速な人口減少により、現在の大島町の人口は約6,800人程度となっていますが、各種施設数や規模は人口10,000人以上の頃からほとんど変わらないままとなっており、現在の人口で従来の施設を維持していくことは不可能な状態です。老朽化した施設の改修、機能の集約や統廃合など、持続可能な大島町をつくるため住民の皆様とともに検討してまいりたいと思いますので、ご理解とご協力をお願いいたします。
・おわりに
私のまちづくりの基本的コンセプトである「きぼうのしま」「にぎわうしま」「やさしいしま」を礎に、また、基本構想におけるまちの将来像「郷土大島を豊かにし、共につくる島」を目指し、町民の皆様との協働により都心に近く豊かな自然を擁する大島町の魅力を活かした、豊かな住みよいまちを実現していくため、引続き町民の皆様並びに議員各位のさらなるご指導ご協力をお願い申し上げまして、令和7年度の所信表明といたします。
令和7年3月4日
大島町長 坂 上 長 一