トッピック 新規ページ008

00 2.オーストラリアトコブシ Marinauris roei GRAY 1826
 この貝はオーストラリア産なので、この図録に載せる貝ではないが、まだ外国産アワビ類の生きた輸入の少なかった1970年の記録です。大島差木地の海岸を歩いていて貝殻の厚い円形状(6.0×4.8cm)のトコブシ類似の殻を採集しました。
 外国産の貝であり、食用か土産品が捨てられたものと気に止めなかったのですが、その後鮮度の良い肉の付いたものも採集されました。種名はまもなく判明しましたが、海の生物は海況の変動などで、生息域が変わる例もあり疑心暗鬼の中、大潮のたびに磯を歩き回りました。そして、この貝はイシダイ釣の餌として持ち込まれていることが分かり、八丈島でも貝殻を拾うことが出来ました。
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3.マダカアワビ Nordotis madaka KURODA & HABE 1979
 大島泉津等でクロアワビに同サイズのものが混獲されましたが、1970年以降の情報はありません。
マダカアワビは大型となるアワビで、著者の手元にある最も大きい標本は房総産(1958年頃)殻長23cmです。大型アワビの話としては、常陸国風土記(713年頃)の茨城県産8尺(約2.4m)、松屋筆記(1850年頃)千葉県産7間(約12.6m)。また現在、真珠はアコヤガイから出来ると考えられていますが、古来真珠といえばアワビから得られる天然真珠であったといいます。日本書記には、明石の海でアワビから桃の実ほどの真珠が出てきた話があり、これも大アワビです。これらの話(荒俣宏 水生無脊椎動物 1994 平凡社)は、正確な大きさは別にしても、かなり大きなアワビが採れた記録と思われます。
 アワビは食用とされる他、カツオ等を漁獲する曳縄漁業やイカ釣の擬餌(ばけ)、衣類のボタン、漆器に象眼する螺鈿(らでん:貝殻の真珠色に光る部分を薄くはぎ、漆器などにはめ込んで装飾をする)材料等に活用されていますが、近年は外国産が主体です。
 外国のアワビ類は輸送技術の向上で生きたまま輸入されています。築地市場に入荷するミミガイ類は23種で、産地はインドネシア、フィリピン、香港、ベトナム、台湾、北朝鮮、米国(カルフォルニア)、メキシコ、フランス、西アフリカ、南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリア(オーストラリア・タスマニア)等です(石川・奥谷 2003)。著者は2003年10月、群馬県の旅館で生きたアワビの炭火焼を食しましたが、この旅館は良心的で献立表には「茜鮑の踊り焼」と書かれていました。茜鮑(アカネアワビ)はアメリカオレゴン州からバハカリフォルニアに分布し、殻長30cmにもなる大型のアワビですが、食したのは殻長9cmと小型であり資源的問題が生じているのかもしれません。

 
乾漆割貝蒔絵飾箱
「月下春秋」 小椋範彦作
(第51回日本伝統工芸展図録より)
4.メガイアワビ  Nordotis gigantean (GMELIN 1971)
 伊豆諸島での分布は八丈島までみられますが、漁獲は大島野増周辺が主体です。八丈島では1967-1974年間に7個体が確認されましたが、特に1970年5月末吉地区(洞輪沢)のトコブシ口開日(解禁日)に300-500gのメガイアワビが3個体混獲されました。その後人工種苗の放流が行われたため天然の生息状況は不明です。生息水深は30m位までで、種類別の主な生息水深は、マダカアワビ15m以深、メガイアワビ10m前後、クロアワビ10m以浅です。行動は夜行性で昼間は大型岩石や岩礁の下部・空間・亀裂・棚等に固着しており見つけにくい。
 餌料は海藻のテングサ(寒天の原料となる。テングサは総称で天草とも書く、紅藻類のテングサ科に属し、漁業として採取されるのは、オニクサ・マクサ・オオブサ・ヒラクサ・キヌクサ・オバクサ等)が主体でアントクメ(方言ヒロメ、ワカメの南方型)も重要な餌料、近年海藻が激減しておりアワビ・トコブシ類には棲みにくい環境になっています。
 メガイアワビ・クロアワビについては、東京都水試でフクトコブシと同様、種苗生産技術が1966年に成功しています。大島では10月、水温が21℃を切る頃に産卵が始まります。受精卵の大きさは0.23-0.28mm、約14時間で孵化、形状はトロコフォラ幼生0.23×0,17mm、次のベリージャ幼生0.29×0.19mm。4-6日で匍匐生活に入り、付着珪藻を摂餌します。10日で0.5mm、20日で1.0mm、30日で1.3mm前後に成長します。第1呼水孔は殻長2.0mm頃より形成されはじめ2.4mmで完成します。この期間は水温・摂餌状況により異なり30-50日です。飼育による1年目の大きさは、メガイアワビ・クロアワビ平均殻長30mm、マダカワビ平均殻長35mmです。飼育餌料は付着珪藻の次にアオサ及び人工餌料を用いるので、フクトコブシと同様、貝殻は緑色となり天然貝との識別に役立ちます。
メガイアワビ(泉津地先秋の浜)
メガイアワビ




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