トッピック ツタノハガイ科1

3 シワガサ Cellana radiata enneagona (REEVE)
 小笠原諸島全域の海岸に多産する種類であり、分布は小笠原以南と図鑑等に記述されています。過去の報告書等では、後述するヨメガカサの一つのパターンとする考え方があります。また、近年、シワガサとキクノハナモドキ C. enneagona (REEVE 1854)は、同種と整理されています(肥後俊一他 1993)。従って、ヨメガカサ・シワガサ・キクノハナモドキ等と記録されている報告書の中身を検討する必要があります。
このような複雑な話となるのは、産地が小笠原以南と遠方であり調査が進んでいないことや殻の模様等が変化に富んでいること等から同定に当たり種々の考えがあるためと考えられます。
ヨメガカサ(9のヨメガカサとは区別)とした報告書は、遠山宣雄(1937)、倉田洋二他(1969)、  今島実(1970)等があります。また、火山列島(北硫黄島・硫黄島・南硫黄島)では、西村和久(1987a.1987b.1988.)の報告書があります。
 キクノハナモドキの図は波部忠重・小菅貞男(1966)、今島実(前出)で見ることが出来ます。
 シワガサの図は奥谷喬司(1986)、奥谷喬司(2000)に掲載されていますが、著者の区分けでは、前者はキクノハナモドキであり、後者が、シワガサと言っているタイプです。
 いずれにしても、小笠原に生息するシワガサには、色々な形状があることを図示したいと思います。
タイプA
 肋が強く、殻高が高い(殻
長49.6mm殻巾35.2mm殻高
12.6mm)。
タイプB
 キクノハナモドキと古い図鑑に図示されているタイプ。幅広の放射肋8本前後あり、その間に細かい肋が多数あります。裏面から見ると幅広の肋の部分は白色、細かい肋の部分は赤褐色を呈します。また、殻の輪郭は幅広の肋の部分が突起しています。松本幸雄他(1970)がシワガサと図示している貝は、キクノハナガイモドキのタイプです。
(殻長40.4mm殻巾32.3mm殻高6.3mm)
タイプC
 タイプBに類似するが、幅広の肋は顕著。細かい肋は消失しています。形状は成長輪紋が積み重なり、タイプBの老成貝とも考えられますが、殻が大型になる訳ではありません。(殻長32.1mm殻巾24.9mm殻高6.6mm)
タイプD
 シワガサと区分しているタイプ。幅広の放射肋8-10本あり、その間に細かい肋が多数あります。裏面からの色彩パターンはタイプBに類似していますが、殻の輪郭は、やや角ばりますが凹凸は顕著ではありません。(殻長38.2 mm殻巾27.4mm殻高7.1mm)
タイプE
 タイプCに類似しますが、細かい肋は見られず、成長輪紋のみとなります。このタイプが成長して、タイプCになるとは考えにくい。(殻長31.0 mm殻巾23.4mm殻高8.6mm)
 なお、殻長15mm位の幼貝は写真に見るように、なかなか奇抜な模様の個体が多い。
 伊豆諸島の記録には、八丈島(葛西重雄他 1968)がありますが、シワガサの分布域が八丈島まであるのかは不明ですが、後述するヨメガカサも多くの形状変異があり、その一つを見れば、シワガサと判断出来そうな個体もあり、今後の研究テーマです。




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