トッピック ツタノハガイ科4

9 ヨメガカサ Cellana toreuma (REEVE)
 和名については、嫁と言う言葉から、@可愛らしい菅笠、A嫁いじめ(小さい器、浅い器等)等いくつかの説があります。
 味噌汁に入れると非常に美味、古くから食用とされたためか、島により、また島の中でも地域により色々な呼称があります。大島セセリ、利島イソモン、新島イソモン・イソモノ・イソムシ、三宅島アサリ・アサリッコ、八丈島、青ヶ島ヒラミ等。味噌汁の具とすると、出来上がる頃には、身が殻からはずれる事も、食べやすく利点です。著者は以前、神奈川県真鶴産のヨメガカサを味噌汁で食べたことがありますが、やはり産地により味には差があるようです。
○ 大島産のヨメガカサのタイプ
  伊豆大島産は様々な模様が見られ、4タイプに分けることが出来ます
タイプA
 殻表は比較的平滑で模様が大きい。このタイプ
が最も多い
タイプB
 殻表に放射状の細かい肋がはしり、色は殻全体暗褐色をしている
タイプC
 殻表に放射状の細かい肋がはしり、色は殻全体が褐色をしている
タイプD
 3タイプのうちで最も放射肋がはっきりしており、八丈島や鳥島のタイプに近く、このタイプは最も少ない。
大島産のヨメガカサのイロイロな模様
○ 八丈島産のヨメガカサのタイプ
  八丈島産はいくつかのタイプに分けることが出来ます
タイプA
 (殻長32.5mm、殻幅25.0mm、殻高9.1mm)。
タイプB
 (殻長38.0mm、殻幅28.2mm、殻高11.4mm)。
タイプC
 (殻長29.3mm、殻幅22.0mm、殻高7.6mm)。
タイプD
 (殻長36.4mm、殻幅27.5mm、殻高11.6mm)。
 これらのタイプ分けは人により異なると思われるので、八丈島産については、イロイロなタイプがあることを認識頂きたいと思います。
○ 鳥島のヨメガカサのタイプ
 オオツタノハガイの項で記述した採集品で、他産地のヨメガカサに比べ、殻には光沢があり美麗です。
タイプA
 (殻長34.3mm、殻幅25.4mm、殻高9.2mm)殻表は白地に赤褐色の放射状模様が9本見え、白色斑点が肋上に見られます。
タイプB
 (殻長31.1mm、殻幅22.5mm、殻高7.2mm)殻表の放射状模様は消失し、肋が強い。
タイプC
 (殻長32.5mm、殻幅23.7mm、殻高6.5mm)タイプAとBの中間形、この個体は、台風等で破損した殻を修復した痕跡があり、絶海の孤島での生息環境の厳しさと、生命力の強靭さがうかがえる標本です。
タイプD
 (殻長34.3mm、殻幅25.4mm、殻高9.2mm)模様も肋も弱い。
10 オチバガサ Cellana amussitata (REEVE)
 原色日本貝類図鑑(平瀬信太郎 1954)、続原色日本貝類図鑑(波部忠重1961)に図示されています。肥後俊一他(1993)は、ヨメガカサと同種とし分布に小笠原を含めています。
 本種は火山列島(北硫黄島から南硫黄島)に多く生息します。写真の貝の大きさは、殻長33.8mm、殻幅24.5mm、殻高8.7mmです。
 松本幸雄(1970)がベッコウガイと記録した貝の学名は本種ですが、写真が無いのでどちらの種類かは不明です(父島・母島で採集)。
11 クルマガサ Cellana radiata orientalis (PILSBRY)
 八丈島(葛西重雄1982)、小笠原(Fukuda 1995)の採集記録があります。写真は2005年スマトラ沖の大地震で津波により大きな被害を受けたスリランカ産(旧名セイロン島)です。大きさは、殻長23.2mm、殻幅18.7mm、殻高8.3mmです。
 フイリッピンの図鑑(Shells of The Philippines 1986)では、クルマガサとシワガサは同一に扱っています。シワガサ・ヨメガカサのなかには、本種に類似した形状(模様パターン)が見られることから、更なる検討が必要と考えます。




トップへ
トップへ
戻る
戻る