トッピック 新規ページ004

シリーズ2:ミミガイ科

 アワビの仲間、有名な「磯の鮑の片思い」は、二枚貝の半分が無くなったような形状から片思いの言葉となっています、無論巻貝、生まれてすぐは蓋を持っています。食用種が多く貝殻は螺鈿細工等に用いられます。日本産は11種、その内伊豆・小笠原諸島では10種が確認されています。近年国内のアワビの漁獲量は激減しており、外国からの輸入が急増しています。それも輸送技術の向上で生きた状態で輸入され、各地の観光地等で料理に使われています。築地市場に入荷したアワビ類は23種、遠くは南アフリカからも輸入されています。なお、本館で所有展示しているミミガイ科は国内産10種、外国産29種の合計39種です。
1. フクトコブシ Sulculus diversicolor diversicolor (REEVE 1846) 
(方言)
 昔から伊豆諸島の重要な漁業対象種であるために方言も多く、大島(こぶく、こながれ、ながれこ)利島(こぶく)新島(こながい)神津島(こぶく)三宅島(こながれ)八丈島(あぶき)と呼ばれています。例えば「ながれこ」とは、フクトコブシは転石等の下に生息するので、採集は石を起こす必要がありますが、その際、起こした石から流れるように離れ、他の石の陰に移動する生態観察から「流れ子」の意味と考えられます。素潜りで転石し裏面にフクトコブシを見つけたところで、息が苦しくなり浮上し、息継ぎして潜るとフクトコブシの姿はすでに無くなっています。この方言のなかで「あぶき」の語源は不明です。近年は「とこぶし」が一般的で、漁業協同組合の水揚伝票には床節とも書かれています
(形状)
 日本国内でトコブシは、伊豆諸島のフクトコブシ型、本州のトコブシ型、薩南諸島のナガラメ型の3つの型に分けられています(吉良良明 原色日本貝類図鑑 保育社)。学名はフクトコブシとトコブシ(Sulculus diversicolor supertexta )に付けられており、ナガラメ型はフクトコブシの学名になっています。
 この3型の貝殻の特徴は、ナガラメ型は貝殻が大きく厚く殻頂が偏り、殻表面には太く深い肋がきざまれています。本海域でのナガラメ型の生息割合は数%と低いのですが,後述する人工種苗の放流で、著者が1995年10月に八丈島で再捕した340個体をタイプ分けしたところ、末吉地区43.4%、中之郷地区27.9%とナガラメ型が多く出現しました。他方、台湾で1985年頃からトコブシの養殖が軌道に乗り日本に輸出するほどに生産量が急増しました。日本からの養殖技術の移転と言われていますが、台湾産はナガラメ型です(西村和久 1991)。ナガラメ型の形状は、八丈島産と比較すると、屋久島産、台湾産の順に殻が細長になる傾向があります。これらの観察結果が生育する海底環境等によるものか、更なる調査研究を期待したいと思います。
 フクトコブシ型は貝殻の大きさや厚さはナガラメ型に似ますが、殻表面は平滑で殻の中央部が盛り上がっています。
トコブシ
台湾の養殖トコブシ
フクトコブシのナガラメ型
 手元の最大型は、八丈島産で殻長96.5mm殻重量72gです。ちなみに、いままでに伊豆諸島で採集されたフクトコブシの最大型は、昭和46年に八丈島の三根地先で採集された殻長11.48cm(三木 1987)で、11cmを超えるものは非常にめずらしいことです。
 トコブシ型は小型扁平で彫刻は不定です。なお、トコブシの出典はオキナエビスと同じ「目八譜」(1843)です。
 トコブシの形状はアワビに似ますが、殻表面にある呼水孔の数が、アワビ類3-4個に対し7-8個と多く、また、アワビに比べ小型です。
フクトコブシの最大型(八丈島三根地先大平潟産)




トップへ
トップへ
戻る
戻る



新規ページ005
新規ページ005
新規ページ006
新規ページ006
新規ページ007
新規ページ007
新規ページ008
新規ページ008
新規ページ009
新規ページ009
新規ページ010
新規ページ010